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映画『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』LOVE PSYCHEDELICO NAOKIが、ロックフィールド・スタジオの魅力解説

【ニュース】
本作を鑑賞し、トップアーティス トでありながら一流のレコーディングエンジニアでもあり、音楽業界では”機材マニア”としても知られる人物に特別スタジオ取材を実施。その人物とは、LOVE PSYCHEDELICO NAOKI さん。LOVE PSYCHEDELICO プライベートスタジオ「Golden Grapefruit Recording Studio」にて、映画の魅力と“機材愛”を語ってもらった。

まず、本作を観た感想について「ものを創る側からの視点の楽しみもあり、ロックファンの立場としてもレジェンドたちの当時のエピソードを本人たちから聞く事ができる。この手の作品は、大抵どちらかの視点の場合が多いのだけれども、本作は両方の目 線から楽しめるので非常に面白いです。単にそこで創られた作品を振り返るのではなく、ロックフィールドで過ごした時間として描か れているのがとてもいいですよね。美談ではなく、トップミュージシャンたちが等身大で当時を振り返る姿が見られるので“ロックフィールドありがとう”という感じですね」とコメント。

また、「作品のインタビュー中にプロデューサーのジョン・レッキー(ザ・ストーン・ローゼスの 1st アルバムなどをプロデュース) を始め登場人物がロックフィールド・スタジオのことを、度々“あの広いスペース(空間)”あのプレイス(場所)と表現するんです が、特にこの“スペース(空間)”という言葉にはミュージシャンやエンジニアたちにとって 2 種類の意味があるんです。1 つは、スタジオ・部屋の音響としての意味。壁の素材、マイクと楽器の距離などを含めたその建物自体の個性の事で、そこでしか録れない音とい うものがあります。もう 1 つは、外の空気であったり、大自然であったり、近隣の事を考えなくて良いというような複合的なアトモスフェア、レコーディング環境や雰囲気という意味。本編で空間、場所という言葉が登場するたびに、この 2 つの意味で言っているように感じて印象に残っていますね」と、ミュージシャンならではの視点で感じた部分を解説。


「何人かのミュージシャンが“経験に深みを与えてくれる”という言葉も言っていたのですが、今はどうしてもメールでデータを送 り合うような時代になってしまいましたが、レコーディングというのは“時を封じ込める作業”だと僕は思っているんです。その場で 過ごした経験ーー喜びや悲しみなどの気持ちをマイクに封じ込める事が、ロックフィールドではできたという実感が彼らにあったから こそ、あの発言に繋がったのではないかと思うと、行ってみたいという気持ちもになりますね」「デジタル録音がまだない 1960 年代、レコーディング・スタジオを自前で作るというのは現代の皆さんが想像するよりも経済的にも技術的にも非常にハードルが高い事で、イギリスなら、ビートルズで有名なあのアビー・ロード・スタジオなどの大きな商業スタジオしか無かったような時代です。マイクで拾った音を、適正な音量で大きなコンソールを通して、これまた大きなアナログレコーダーに録音しなければならず、とにかくレコードを出すには場所もお金もかかる時代でした。ロックフィールド・スタジオは、農家だった兄弟 2 人が実際にスタジオを作り上げたのもさることながら、始めた当初からすでに結構いい機材が揃っていた事にまずびっくりしましたね(笑)ザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズがデビューした 60 年代初頭頃は 4 トラックのコンソールのものしか無く、程なくし て 60 年代後半に差し掛かる頃 8 トラックが大手のスタジオに登場するんですが、1968 年に誕生したコーチハウス・スタジオに早速その頃、最新鋭だった 8 トラックが導入されるというのも驚きなんです。"一応何でも録れます"という姿勢ではく、本気でロンドンの大手商業スタジオにも劣らないスタジオを、随分早い時期から二人が目指していたのがよく分かるエピソードです。他にもいろいろ見所はあって、マイクも、劇中にノイマン U67 というドイツの 60 年代初頭に登場したものが映っていて、これは当時レコーディング業界 では大定番となった現代でも愛され続けている非常に高価なマイクなんですが、こういう信頼性の高いマイクがオープン間もない頃か ら普通に転がっている(笑)。あとはアビーロード・スタジオに置いてあるようなコンプレッサーだったり、信頼性の高い定番のレコーダー、そういうものが何台も当時のスタジオ風景に映っていたりします。

当時、今も勿論そうですが、レコーディングをするとなったら、プロデューサーやエンジニアはまずスタジオにどんな機材があるか 確認するんです。コンソールは○○製、△△のマイクが何本あって、□□のマイクが何本ある、これなら○○○な録り方が出来る、と いった具合です。そこで、信憑性の高い機材がばっちりあると分かれば、多少の立地条件の問題があってもジョン・レッキーのように 興味を示すプロデューサーはいたでしょうね。そうやって訪れた若いミュージシャンたち、それこそブラック・サバスなどのアーティ ストが訪れては結果を残し、ロックフィールドの評判があっという間に広まっていったのではないかと。見た目に騙されてはいけないスタジオですよね」と、NAOKI さんならではのレコーディング機材についての見解も。
                 
ロックフィールド・スタジオの環境の凄さについては「70 年代に入ると、ロックフィールドにも豚小屋を改造した残響ルームという ものが誕生します。この頃は、音を響かせようと思ったら、1950 年代直前頃に発案された“エコーチェンバー”というシステムを用い ていました。音が響く部屋にマイクとスピーカーを置いて、響かせたい音をケーブルでその部屋まで送ってスピーカーで音を鳴らし、 響いた音をマイクで集音していたんです。丁度お風呂場にマイクを立てて自然なエコーを録音するようなイメージです。当時は、その エコー・チェンバー・ルームというのを備えていないとリヴァーブやエコーのサウンドが生み出せないわけですから、一流のレコーデ ィング・スタジオには必要不可欠な設備でした。今のカラオケに比べたら随分大掛かりですね。それを片田舎のロックフィールドでは 1970 年代半ばに 3 つも作ってしまったんですね。この頃になるとアビーロード・スタジオと比べても引けを取らないぐらいになってき ているなと思います。ピンク・フロイドなどのビッグネームたちがアビーロードで名盤を毎年のように出している頃に、ロックフィー ルドではクイーンが牛に囲まれながら“ボヘミアン・ラプソディ“が作れるような環境ができたというのは本当に凄い事!」とも語る。

機材以外にも魅力はあるといい、「シンプル・マインズがアビーロードは敷居が高く感じると発言しているところにも共感しました。 現代でもこれは同じですね(笑)。大手の商業スタジオってちょっと病院みたいな感じがあって、手ぶらで行くと楽器ひとつないので、自分たちで色々と持ち込んで遊び場にしていかないとならないんです。ロックフィールドは音楽と日常がとても近い。宿泊施設なので 手をのばせば楽器もすぐそばに常にある。それが、今でもミュージシャンたちから愛され続けている理由なんだと思います。

登場したミュージシャンについては意外だなと思ったのは、イギー・ポップ。自然と戯れて音楽を作って、ロンドンに行って裸にな って歌うって不思議だなと思いました(笑)結局、音楽に向き合う瞬間は、音楽家は皆、純粋で真摯な精神状態なんだなぁと、一気に 親近感がわきましたね。ブラック・サバスの「パラノイド」って僕の音楽人生においても大切な曲で、皆さんご存知の超名曲なんです が、語弊を恐れずに言うならばあの元祖ヘヴィー・メタル・サウンドというものを生み出したのはロックフィールドだったかもしれな い、って思いました。人間て、場所によって気持ちも変わるじゃないですか。これがロンドンの商業スタジオだったら、通常のレコー ディングマナーに従い、エンジニアの言う事を聞いて音量を下げなければならなかったかもしれないけれど、ロックフィールドの開放 的な空間があったからこそ、出した事もないような大音量があの曲の爆発的なムードが生まれたのかもしれないですよね。あと、オアシスのリアム・ギャラガーのインタビューは印象的でした。あんなに過去の思い出を、まるで家族の喧嘩話のようにざっ くばらんに振り返っているのは必見だなと思います。ノエルと過ごしたバンドでの時間と絆に今でも彼が誇りを持っていること、相棒 へのリスペクトを今も忘れていないと感じられる発言の数々が、ファンとしては本当に嬉しくなるインタビューでした。カッコいい人 ですね」など次々と名が挙がった。

他にも 60 年代のレコーディング事情についての NAOKI さんの解説は興味深く、この作品の時代の少し前、60 年代初頭はまだレコー ディングエンジニアとミュージシャンの間には立場的な距離が現代よりもあり、アビーロード・スタジオではマイクによって、録音時 の楽器との距離などが形式的に細かく決められており、レコーディングエンジニアも「技師」的な立場で録音に関わっていた時代があっ たこと、ゆえに昔はアビーロードのエンジニア陣は研究者のように白衣を着ていたというエピソードも、そのあとのロックフィールド の時代に向け音楽業界が急激に変化していく過程を理解するのには大変興味深い話題だった。

NAOKI さん、そしてバンドメンバーの KUMI さんの二人は劇中に登場するものをはじめとした非常に貴重なヴィンテージ機材を彼らの プライベートスタジオ「Golden Grapefruit Recording Studio」に多数所有しており、普段からレコーディングでも何度も使用しているとの事で、そのうちのいくつかを披露してもらう事に。ロックフィールド・スタジオにあったものと同じモデルから、実際にジョン・ レノンが使用したマイクまでお宝が次々と登場。音楽仲間の間でも、そのマニアぶりは知られているため「あの機材を見せて欲しい!」 という連絡が来る事もしばしばだという。

「ロックフィールドに共感するのは、いい機材を揃えるという事よりも、スタジオ自体が楽器になっているというような、そこに居 たいと思わせるような場所だという、インディペンデントの魅力がある部分ですね」これだけの環境が整ったのは、LOVE PSYCHEDELICO の作品づくりをする過程で、新たな事に挑戦する度に機材が増えていったからだ という。マイクを音が響く廊下のような場所に立てて離れた場所で演奏したり、仕切りをして音の響かせ方を変えたりといった、劇中 にも登場した手法は普段から使っているといい、ロックフィールド・スタジオがいかに創設当初から基礎的かつ普遍的なレコーディン グが可能だったかという事を物語っていた。

現在もなおレコーディングに使用され、世界中から愛される魅力と魔法に満ちたロックフィールド・スタジオの歴史と滞在したミュ ージシャンたちを描いた『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』を観れば、音楽づくりにとっての環境の大切さが分かり、新たな 視点が得られるだろう。




アレサ・フランクリンやレイ・チャールズも使用し たモデルと同じ 1930 年代 Western Electric 製のリボンマイク




1960 年代のもので、ジョン・レノンが実際に使用し たというマイク実物。元々は売り物ではなかったものを L.A.で入手。KUMI の LOVE PSYCHEDELICO の楽曲でのほとんどの唄はこれで録音されている。ロッ クフィールド・スタジオでも使われいたノイマン U67




ビートルズ「Get back」で有名なルーフトップコンサートで使われたマイクと同じモデルで当時のものだという AKG の C30




コンプレッサーUniversal Audio UREI 1176。ロッ クフィールド・スタジオの各時代のレコーディング風景にも登場しているので劇中でチェックしてもらいたい




1959 年製 Altec のスピーカー通称「銀箱」。アビーロー ド・スタジオでビートルズがミックスに使用していたモデルと同じユニットが搭載されている




レスリースピーカ ー。オルガンの音を響かせるためのもので、中に回転するスピーカーが搭載されている。ロック フィールド劇中でもブース内で確認することが出来る




監督:ハンナ・ベリーマン 撮影:パトリック・スミス 
編集:ルパート・ハウスマン 音楽:アレクサンダー・パーソンズ 
出演:キングズリー・ウォード、チャールズ・ウォード、オジー・オズボーン、ロバート・プラント、リアム・ギャラガー、クリス・マーティン、ティム・バージェス、ジム・カー 2020 年/イギリス/ドキュメンタリー/96 分/シネスコ/2.0ch/原題:Rockfield:The Studio on the Farm /日本語字幕:大塚美左恵
配給・宣伝:アンプラグド 
© 2020 Ie Ie Rockfield Productions Ltd. http://rockfield-movie.com
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