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映画『春画先生』塩田明彦 監督オフィシャルインタビュー、新場面写真が到着

【ニュース】
10 月 13 日公開となった映画『春画先生』を観た後に、より本作を深く楽しんでいただける塩田明彦監督のオフィシャルインタビューが到着。併せて、新場面写真も解禁された。



以下、オフィシャルインタビュー

――――春画がたどった歴史そのものにドラマがあると思いました。

「江戸時代、“笑い絵”と呼ばれていた春画は、おおらかで明るく楽しいものでした。今のようにこそこそ隠れて楽しむものではなく、オープンに見てみんなで一緒に楽しむメディアでした。その世界には影がありません。隠すものがなくて、夜でも昼のように明るい。隠すものや闇、見えない部分があることでドラマは立ち上がるものだけど、春画はあまりにおおらかすぎてドラマを起動させるための枷がないんです」と解説。そんな春画をテーマにどのような話を立ち上げるのか。夜な夜な春画を見ながら考えたという塩田監督は「こんなにも大らかで素晴らしい世界なのに、西洋の倫理観や価値観、つまりキリスト教が入ってきたことで一転、タブー化され禁書にまでなってしまって」と春画がたどった歴史を説明。しかし、それこそが物語を作る上でのヒントとなったそうで、「春画がたどった歴史そのものにドラマがあると思いました。おおらかな時代を経て、闇が出てきて、タブーとなり、全否定されてしまう。でも春画はヨーロッパに渡って印象派やエゴン・シーレ、クリムトに大きな影響を与えています。そういう流れを人物に託す。つまり春画先生は、江戸のおおらかさに誰よりも憧れ、愛しているけれど、現実には誰よりも今の倫理観に縛られて、禁欲主義的で、奥さんを絶対裏切りたくなく、一夫一妻制をきちんと守っている矛盾に満ちた人物」とテーマを見つけ、キャラクター設定を考えた経緯を振り返った。

―――世間はどう言うのか分からないけれど私たちはこうなったという一つの境地に達する登場人物たち。

春画と春画先生こと春画研究家・芳賀一郎に一目惚れをする弓子は「生きるということを体現しているのかな。世界をどのように生きるのか、その人なりの倫理観があると思うのですが、弓子は次から次へと自分が思い込んできたものと違うものに直面してのめり込んでいく。その生命力がすごく好きでした。単に先生に転がされているのではなく、先生は先生で先の見えないことをやっていて、実は弓子は弓子で先は見えないけれど、一途な思いで飛び込んでいくということをやっています。世間はどう言うのか分からないけれど私たちはこうなったという一つの境地に達する、それが僕の映画でよく起こる描かれるポイントかもしれないです」と丁寧に 2 人の関係と自身の作風にも触れた。

―――いかに性や愛に対する価値観や倫理観が時代や文化によって変化していくのかを描きたいと思っていました。

「なかなか綱渡りの作劇をしている」と、言葉を選びつつ語る塩田監督。「みなさんがドン引きする瞬間もあったかもしれません。
でも、ドン引きする瞬間がないと最後もありません。いかに性や愛に対する価値観や倫理観が時代や文化によって変化していくのかを描きたいと思っていました」と熱弁し、「ここで面白い話をひとつ」と前置きし、杉田玄白が『解体新書』を翻訳した際のエピソードをピックアップ。「どう訳していいか分からない言葉にぶち当たったそうです。その言葉とは“愛”。今の僕たちが当たり前に思っている“愛”の概念すらが、当時の江戸にはなかったんです。僕たちが思い込んでいる世界とは相当違うらしい」とし、春画の捉え方もまた今とは全く違っていたと強調した。

―――ペリーに春画を差し出すと、これはなんだと、ペリーが激怒したそうなんです。

また、映画に登場する渓斎英泉(けいさい・えいせん)の絵に触れ、「海が見える絵なのですが、なんか不穏だと思いました。それこそペリーの(黒船来航の)予感がしたんです。理由はあとで気づきました。葛飾北斎に先駆け、初めて“ベロ藍”と呼ばれるヨーロッパの絵の具を春画に使ったのが英泉なんです。その絵の具が使われ始めてから、少しずつ夜は夜として、闇は闇として描かれるようになり、人物の肌も立体化していきます。明暗がついたわけです。だんだん西洋に侵食されていくというのでしょうか…」と話し、さらにペリーと春画にまつわるエピソードを思い出したと補足する。「大砲を持って圧力をかけてきたペリーに対して、穏便に交渉したい江戸幕府。当時、戦いに向かう際に持っていくと身を守ってくれる縁起物、ラッキーチャームとされてきた春画をペリーに贈ったという話があって。ところがこれを観たペリーが、これはなんだ!と激怒した。皆さんすでにご存じのように、春画は男性性器を笑うぐらい大きく描くわけで…これが今日に至るまでの日本とアメリカの関係性に影響を与えている?」と、時代や国によって価値観や倫理観が全く違っていたことを改めて強調した。

―――ある日とつぜん禁欲主義を強要された日本の文化は、必然的に倒錯的な欲望を開花させていった?

「文明開化以降、日本古来のおおらかな性の文化が全否定されて、キリスト教的な禁欲主義が社会に流布していくと、北村透谷を始祖とするらしいプラトニックな“恋愛感情”を主題にした文学が生まれてきて、それがふっとねじ曲がって谷崎潤一郎の描いたマゾヒズム小説へとつながっていく。大らかで伸びやかな性愛の欲望がいきなり外圧によってねじ曲げられたのだから、これはいわば必然だったはず」と塩田監督は語ります。「つまりそれが先ほど語った春画先生こと芳賀一郎の抱える矛盾であり倒錯なんです」。そして映画の前半から中盤にかけては、のどかな江戸の空気が流れていたのが、一葉の登場と共に一気に奇妙な倒錯の世界へと走り出していくのを、「要するに一葉は黒船なんですね。そうして映画は文明開化以降の世界、江戸の大らかさの失われた一神教的倒錯の世界へ突き進んでいく」と続け、「でもここまで狙いを明かしてしまうと、ちょっと語りすぎかもしれません」と笑う。「といって別にキリスト教を否定してるわけではないのです。僕自身キリスト教徒ではないけれども、その価値観、倫理観に逃れようもなく支配されているわけで、ただそのことをある歴史の流れの中で意識する。すると精神のフレームが少し緩んで、自由の風が吹き抜けていく。魂が少し軽くなる。大事なのはそこで、映画にはそういう役割もあるということなんですね」。


塩田明彦監督 プロフィール

1961 年 9 月 11 日生まれ、京都府出身。99 年、『月光の囁き』『どこまでもいこう』がロカルノ国際映画祭に正式出品後、二作同時公開され、高い評価を得る。2001 年、宮崎あおい主演『害虫』がヴェネチア映画祭現代映画コンペティション部門(現・オリゾンティ部門)出品の後、ナント三大陸映画祭審査員特別賞・主演女優賞を受賞。03 年には『黄泉がえり』が異例のロングランヒットとなる。05 年、『カナリア』でレインダンス映画祭グランプリ。07 年には『どろろ』が大ヒットを記録した。近年の作品に、『抱きしめたい・真実の物語』(14)、『昼も夜も』(14)、『風に濡れた女』(17、ロカルノ国際映画祭コンペティション部門若手審査員
賞)、『さよならくちびる』(19)、『麻希のいる世界』(22)などがある。



内野聖陽 北香那 柄本佑 白川和子 安達祐実
原作・監督・脚本:塩田明彦
製作:中西一雄 小林敏之 小西啓介
プロデューサー:小室直子 共同プロデューサー:関口周平 ラインプロデューサー:松田広子
音楽:ゲイリー芦屋 撮影:芦澤明子(JSC) 照明:永田英則 録音:郡弘道 美術:安宅紀史
装飾:山本直輝 スクリプター:柳沼由加里 衣裳デザイン:小川久美子 衣裳:白井恵
ヘアメイク:齋藤美幸 編集:佐藤崇 サウンドエディター:伊東晃
VFX プロデューサー:浅野秀二 VFX ディレクター:横石淳
助監督:久保朝洋 制作担当:宮森隆介 宣伝プロデューサー:大﨑かれん
製作:『春画先生』製作委員会(カルチュア・エンタテインメント、TC エンタテインメント、ハピネットファントム・スタジオ)
企画・製作幹事:カルチュア・エンタテインメント 制作プロダクション:オフィス・シロウズ
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
2023/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/114 分 <R15+>
Ⓒ2023「春画先生」製作委員会
※撮影2022 年 9 月
[※ご注意※]
本作には、無修正の春画がでてきますこと、ご留意の上、ご鑑賞ください。
10月13日(金)公開


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