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阿部進之介「食い入るように没入していく映画になった」映画『かぞく』初日舞台あいさつ

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漫画家・土田世紀が残した『かぞく』のなかで描かれた5つのエピソードを原作として、澤寛自身の生い立ちや経験を織り交ぜ、現代家族を包括的に描く映画へと昇華させた。旧来の家族構造から「核家族」を基準に、「婚姻関係」「親子関係」「血縁関係」「法や倫理に背いた関係」「父とは」「母とは」「子とは」などのテーマを各エピソードに振り分け、土田世紀が描いた物語が現代家族の背負ってきた旧来の家族構造の特徴である家父長制家族の諸問題から生まれた物語であったとして、それぞれ家族の再生を試みながら「家族とは何か」を問いかける。

吉沢亮、永瀬正敏、小栗旬、阿部進之介(登場順)主演 映画『かぞく』の初日舞台あいさつが 11 月 3 日にテアトル新宿で実施。阿部進之介、澤寛監督、鈴木大造プロデューサーが舞台あいさつに登壇した。この日、登壇者陣は上映後の余韻と熱気が漂う会場に登場。澤監督は「とても丁寧に作って、とても大切な気持ちを乗せた映画です」と心を込め、大きな拍手を浴びた。




本作で映画監督デビューした澤監督だが、「日本映画と関わったキャリアの始まりにお世話になった方がいて、その人から『あなたは映画監督になるのよ』と言われたことがあった。『衣装を通して、監督になりなさい』という一言をいただいた。15 年以上、コスチュームのデザインや人物のデザインをやってきて、どこかでずっと『映画を撮るんだ』という思いが根っこにあった」と告白。「自分はどうやって映画を撮るのかということを考えながら、コスチュームや人物造形に関わっていたのかなと思います」と胸の内を明かした。

これまでにも澤監督と仕事をしてきたという阿部は、その言葉に大いに納得した様子。「最初に彼と映画の仕事をしたときに、衣装を用意して(俳優に)着せるだけではなく、衣装を用意するときのストーリーや、カメラの前に立って集中をしている僕が、どのようにしたら芝居をやりやすいかということまで考えていた。演出側のことも考えながら接してくれていた」と回想。「『映画のために何をするのか』という思いが、とても強い人」と澤監督が常に演出側の視点を持ちながら仕事に臨んでいたと話した。

「澤監督が原作と、それをもとにした台本を持ってきてくださって、非常に感動した。これは何がなんでも実現しなければならないと思い、協力してくれる方を募って制作に至りました」と澤監督の熱意に背中を押されてここまで辿り着いたと振り返った鈴木プロデューサーは、「非常にビジョンが明確な監督。シナリオを作る段階から、全スタッフ、キャストに、すべてのシーンのコンテやイメージ画を展開していました。僕は 20 年、映画制作をしてきましたが、そういったアプローチを見たのは初めてです。合理的かつ、わかりやすかった」とその力量に感服していた。

セリフが少ないながら、それぞれの登場人物の心象風景を通して「家族とは何か」と観客に問いかけるような力強い映画が完成した。阿部が「セリフが少なく、自然と食い入るように没入していく映画になった」と切り出すと、観客の中にも大きくうなずく人の姿がたくさん見受けられた。阿部は「それでいて突き放しているわけでもなく、自然とお客さんがそこにある情報を拾っていきたくなるような映画。お客さんが能動的に映画に接して、お客さんも参加するような映画になっているんじゃないかなと感じました。表現する人、作る人も不安になるものなので、いろいろなことを『伝えよう』とするあまり表現過多になることもある。僕は本作を観て、『いらないものを削いでいったら、こうなるよな』と思いました」と本作の表現方法に共鳴していた。

画作りはもちろん、音楽や音声にも澤監督のこだわりがたっぷりと込められている。じっくりと耳を澄ますとあらゆる音を感じられる映画でもあり、澤監督は「セリフの取り扱いはとても慎重にやっていました。画で(キャラクターの気持ちが)伝わると判断したところには、セリフを抜いていくという作業がありました」とセリフが少なくなった意図について説明しつつ、「そういうことができてくると、環境を説明するための音が必要になってきた」と音へのこだわりを吐露。サウンドデザインはアピチャッポン・ウィーラセタクン監督作品『世紀の光』『ブンミおじさんの森』『メモリア』などに参加してきた清水宏一が担当しているが、澤監督は「清水さん、そして音響効果の堀内さんと一緒に、画に必要な音を精査してデザインしていきました」と音について細かく設計をしていったと語る。SPAC 静岡県舞台芸術センター芸術総監督である宮城聰の協力のもと、SPAC の俳優たちが音楽演奏に参加しており、「SPAC の俳優の方たちが、鳥の声なども演じている。登場人物が何を感じているかを表現するために、そういった、日常のようで日常ではない表現をするなど、特異な音響表現を行なっています」と新たな境地に挑んだとい
う。

撮影を述懐して「本当はもうちょっとセリフがあった」とつぶやいた阿部は、完成した映画では削られたセリフがあったものの、「今の監督の話を聞いて、なるほどなと思った。役本人が表現するのではなく、音で表現することで補われていた。音の表現や音楽が、本当にすばらしかった」としみじみと語る。すると澤監督は「音楽は、舞台音楽家である棚川寛子さんが、“父”や“母”などテーマごとに曲を作ってくれた。そして SPAC の俳優の方たちが演奏者となって、映像に音を落とし込んでくれた」と感謝しきり。

阿部は「それぞれのパートが、映像を観ながら演奏をしているんですよね。だからこそ、気持ちを乗せながら演奏できたのかなと思った」、その収録に立ち会っていたという鈴木プロデューサーは「フィルムスコアリングという形式。ライブ感あふれる音を作っていただいた」と制作背景を思い浮かべつつ、映画に寄り添った音楽に惚れ惚れとしていた。

またデジタル制作が主流となっている中、本作ではフィルムでの撮影が行われている。鈴木プロデューサーは「澤監督のこだわりから、フィルムの色彩の再現度、やさしさを追求したいということで、クランクイン前に相談して、フィルムを採用しました」とコメント。阿部と「フィルムが高くなった」とその貴重さについて語り合う中、澤監督は「光の捉え方など、実際に私たちが目にしているものを再現しようと思った。また日本の風景を切り取ろう、人の感情を切り取ろうという思いもあり、フィルムカメラで撮ろうと思った。フィルムに映る物質性も含めて、大切な作業だったなと思っています」とその重要性を口にし、阿部も「光や虫、自然がとても美しかった。その場所の美しさがちゃんと映っていた」と映像の美しさについて驚きと共に語っていた。


最後には、阿部が「この映画が少しでも、皆さんの人生の一部になっていただけたらうれしいなと思います。どこかで思い出していただいて、自分の人生との結びつきが少しでもあったらうれしい。僕も大切にしたい映画になりました」、鈴木プロデューサーは「この映画は観るタイミングによって、それぞれのシーンの表情が変わるように仕上がったと思っています。ふとしたときに思い出していただいて、またご覧いただけるとうれしいです」と希望。「ありがとうございました」と改めて観客に感謝した澤監督は、「心象をどのようにポエジーとして伝えていくかというアプローチをした映画なので、少し掴み取りづらい部分があるかもしれません。またどこかでこの映画に改めて出会っていただき、長く付き合っていただければという思いで制作しました」と映画に込めた思いを語ると、会場からは今日一番の拍手が鳴り響き、作品の持つ美しい余韻が漂う中、イベントは終了した。
(オフィシャルレポート)




原作: 土田世紀「かぞく」(日本文芸社刊)
監督・脚本・編集・衣裳デザイン: 澤寛
音楽:棚川寛子 演奏:SPAC 音楽制作特別協力:宮城聰 サウンドデザイン:清水宏一
撮影:山本英夫 照明:小野晃 美術/装飾:渡辺大智 録音:竹内久史 キャスティング:杉山麻衣
エグゼクティブプロデューサー:村田千恵子 プロデューサー: 松橋真三 企画・プロデューサー:鈴木大造
出演:吉沢亮、永瀬正敏、小栗旬、阿部進之介(登場順)
鶴田真由 渡辺真起子 福島リラ 秋吉久美子
込江大牙 粟野咲莉 田代輝
根岸季衣 野口雅弘 瀧内公美 片岡礼子 山口馬木也
上映時間: 1 時間 22 分 48 秒 フォーマット: アメリカンビスタ ・ 5.1ch
制作プロダクション: クレデウス 製作・配給: アニプレックス
©土田世紀/日本文芸社,Aniplex Inc.
11 月 3 日(金・祝) より、テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開中

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